2021年12月 4日 (土)

続・横浜シーサイドラインでの(仮称)上瀬谷ラインの検討状況

 先日の記事では、横浜シーサイドライン社が、横浜市の依頼を受け、相鉄線瀬谷駅と、旧上瀬谷通信施設エリアとを結ぶ新交通システムに対する運行事業者としての事業参画可否を外部有識者含めて検討、判断することに着手した旨の報道があったことを記しました。その後、横浜シーサイドライン社として、事業に参画すべきでない旨の結論を判断し、正式に横浜市に対し回答しました。

米軍跡地の新交通、事業参画にノー 横浜市の3セク会議 (朝日新聞デジタル 2021年11月17日)
「横浜シーサイドライン」は16日、... 市から要請された上瀬谷ラインへの事業参画について「現時点では参画すべきでない」とする上申書をまとめた。
... 三上章彦社長は会議後、「市の事業提案は実現性のプロセスが不明確で内容は疑問視せざるをえず、『参画すべきでない』との結論は妥当と考える」とするコメントを出した。

上瀬谷ライン「参画すべきでない」 横浜市の三セク鉄道 (日本経済新聞、2021年11月17日)
横浜シーサイドラインの判断を受け、同市の担当者は「運行事業者からみて課題があったと認識している。今後、正式な回答を待って対応を検討したい」と話した。

上瀬谷ライン不参画の経営方針決定 横浜市の三セク鉄道 (日本経済新聞、2021年11月18日)
横浜シーサイドライン(横浜市)は18日に常務会を開き、現時点で事業に参画しないという経営方針を全会一致で決定した。11月末にも市に通知する。
... 同社の三上章彦社長は「早急に事業計画の見直しをすべきだ」とのコメントを出した。

横浜・米軍跡地の新交通、三セクが参画断る決定 計画見直し可能性も (朝日新聞デジタル2021年11月19日)
経営トップによる常務会を開催。... 「参画すべきでない」とする上申書を「妥当」と結論づけた。同社は回答書をまとめ、市が期限とする11月末までに提出する。
... 市都市整備局の担当者は取材に「回答を精査した上で今後の進め方を検討していく」と話す。...

需要読めず負担重く 横浜市の「上瀬谷ライン」暗雲(日本経済新聞、2021年11月29日)
事業参画を再検討する可能性 ... 条件として同社は、テーマパークの具体的な計画や新交通システムの延伸計画、テーマパークが撤退した場合や感染症流行時などのリスク回避策の提示、テーマパークを建設するコンソーシアム(共同企業体)からの出資、適切な工事期間や整備事業費などを挙げている。

【インタビュー】上瀬谷の新交通 横浜シーサイドライン社長に聞く(Yahoo! Japan ニュース/TVK、2021年12月 3日)
第3セクターは ... ややもすると横浜市の依頼について素直に受け止めて、事業化しながら困ったことがあったら横浜市が税金で助けてくれるというイメージがあります。
... 地域に必要な第3セクターも自分たちで責任を取っていく。ある意味では、第3セクターの経営の健全化が社会から厳しい目で見られていると思う。

 ここまでの経緯をまとめると以下の通りです。

  • 横浜市は、上瀬谷通信施設跡地で2027年に開催予定の国際園芸博覧会(花博)およびその後の跡地開発(テーマパーク開設)とし、将来的には年間1500万人が訪問するエリアとすることを企画した。
  • 横浜市は、「(仮称)都市高速鉄道上瀬谷ライン整備事業」として2020年1月には環境影響評価手続に着手し、2020年7月には「環境影響評価方法書」を公表した。
  • 横浜市は、「(仮称)上瀬谷ライン」の整備費を約640億~680億円と算定し、いわゆる「上下分離」方式を採用し、整備費のうち約2分の1を公費(4分の1を横浜市、4分の1を国)の負担、残りを運行事業者の負担で実現するとした。
  • 横浜市は、市内で新交通システム「シーサイドライン」を運行する横浜市の第三セクター横浜シーサイドライン社に対して、運行事業者としての事業参画、および同社が主体となって年内に国(国土交通省)に対して軌道法に基づく事業に必要な申請(特許申請)を行うこと、を求めた。
  • 横浜シーサイドライン社では、事業参画の依頼を受けて、事業の採算性や継続性について、外部有識者を含む検討会議を実施し、回答する方針を示した。

横浜市から(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画の依頼がありました。(2021年9月8日)

  • 同社では、本年(2021年)11月18日には横浜市による現時点での事業参画依頼を断念する方針決定を行い、横浜市が期限と定める11月末日迄に横浜市に対し正式回答する方針を明らかにし、11月26日には正式回答を行った。

令和3年度第1回経営方針裁定会議の開催(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼に関する審議(2021年10月6日実施)

令和3年度第2回経営方針裁定会議の開催 (仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼に関する検証・審議(2021年10月26日実施)

令和3年度第3回経営方針裁定会議の開催(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼に関する検証・審議(2021年11月16日実施)

(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼について(横浜市へ回答)(2021年11月26日)

  • 同社では、12月2日付けで「(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画の再検討に係る方針について」と題して社長談話を公表した。

(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画の再検討に係る方針について(社長談話)
本事業の採算性や継続性について抜本的な見直し提案がされた場合は、当社は本事業への参画を再検討する所存です。

 かねてより無理筋が過ぎる計画と考えられていましたが、この半月ほどで事態が大きく動きました。「弊社の筆頭株主である横浜市や横浜市民に予期せぬ負担をかけることなく」「弊社のできる範囲でサポートしていきたい」「もう少し幅広い方が利用いただけるような街づくりプラン ... 延伸ありきではなく、街づくりの深堀りした議論が前提に必要」「テーマパーク構想以外に ... 地域課題を解決するために市が何をすべきなのかという議論が外から見ていて、横浜市には不十分かなと思っています。 」等々、一般に第三セクターの幹部層からはなかなか聞かれない類のコメントを横浜シーサイドライン社の社長は発信しています。第三セクターとしては当たり前でなくても、一般的な事業者としてはごく当たり前の姿勢です。街づくり、公共交通の整備、行政システム、という枠を超えて考えさせられます。 (H.I.)

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2021年11月20日 (土)

金沢区富岡地区における地域交通「とみおかーと」実証実験

 金沢区の京急富岡駅西側エリアでは、横浜市、京浜急行を中心として、「とみおかーと」と呼ばれる地域交通にかかる実証実験が2018年度から行われており、今年(2021年)も11月 1日から開始されたとのことです。

京急沿線の富岡地区における 地域交通"とみおかーと"実証実験のお知らせ [pdf]
当該エリアは、急勾配な坂道や狭あいな道路が多く、バス停や鉄道駅へのアクセスが容易でない地域があるなど、交通課題を抱えており ...。今年度は本格運行に向けての最終段階と位置付け ... 有償実証実験を行います。

【産学官連携】横浜市金沢区富岡エリアにて2021年11月1日(月)から開始
今後の本格運行を目指し、とみおかーと実証実験(乗合型移送サービス)を実施
4年目となる今年は、新たにキャッシュレス決済導入や、外出促進アプリを用いた行動分析を開始
 [pdf]
今年度は ... 手挙げによる自由乗降での有償実証実験を行います。

【産学官連携】乗合型移送サービス「とみおかーと実証実験」に協力
三井住友カードと小田原機器は、Visa のタッチ決済を導入することで、利用者の利便性向上、本実証実験に おける最適な運行方式の検証を支援致します。

 当地のみならず横浜郊外の住宅地にありがちな急勾配、狭隘な生活道路の中に立ち並ぶ住宅向けた地域交通は過去より長年にわたり課題が放置されている状況が数多く見られますが、当地での実証実験では、駅と住宅地とを結ぶ移動手段の提供だけでなく、地域の集会場や京急グループへのスーパーマーケットへの移動支援、停留所を定めない「フリー乗降」など様々な利用形態への対応を目論み、電動小型低速車(いわゆる「ゴルフカート」)、ミニバンやワゴン車等々、さまざまな車両を用いた実証実験がなされてきました。

 2021年度の実証実験は、2021年11月1日から2022年1月末まで実施される予定で、朝夕の運行時間帯の拡大、小人運賃の設定、キャッシュレス決済(Visaのタッチ決済)導入等が新たな取組みと位置付けられているとのことです。今年は報道発表において見出し文にて「今後の本格運行をめざし」、本文でもにて「今年度は本格運行に向けての最終段階と位置付け」と記載されていることから、昨年までの取組みに比べると、「地に足がついた」、悪く言うならば「置きにいった」取組みと感じられます。

 こうした取組みは、横浜ほどの人口集積がない地域の自治体ではごく当たり前のように行われています。その多くが行政の補助を得て、地域住民や通院者、社会的弱者への公的サービスを目的として行われています。しかし、今回の取組みから察するに、行政は地域に適した交通システムの実現に向けた環境整備に対する協力体制は築いているものの、本格運行後の事業自体は交通事業者に委ねられているように思われます。横浜市内でも様々な理由とともに郊外部ではバス路線減少、本数減便など公共交通の弱体化が顕になっている状況で、このような緩やかな施策で現実の危機的状況に間に合うのか、多少心配ではあります。(H.I.)

過去3年間の活動は以下の通り

【産学官連携】2020年10月11日(日)から横浜市金沢区富岡エリアで実施
地域交通課題解決に向けた 乗合型移送サービスの実証実験
3年目の今年は運行範囲の大幅拡大、実用化を見据え有償での検証も実施

【産学官連携】沿線の地域交通課題解決に向けた交通システム
11月15日(金)から「グリーンスローモビリティ」等を活用した実証実験を開始します
昨年の実施結果を踏まえて運行方法やルートを策定 グリーンスローモビリティに加え乗用車も活用します!

10月29日(月)から「電動小型低速車」の実証実験を開始します!

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2021年10月31日 (日)

横浜シーサイドラインでの(仮称)上瀬谷ラインの検討状況

 先日の記事から少し時間があいてしまいましたが、横浜市の依頼を受け、相鉄線瀬谷駅と、旧上瀬谷通信施設エリアとを結ぶ新交通システムの運行事業者としての参画を検討している横浜シーサイドラインでは、事業参画可否を内部で検討していはいるものの、進捗芳しくないようです。

米軍跡地の新交通システム、横浜市の三セクが参画可否めぐり初会合(2021年10月 7日、朝日新聞デジタル)
会議は、同社幹部4人に外部の弁護士と公認会計士が加わった計6人で構成。
... 三上社長は朝日新聞の取材に対し、テーマパーク構想の具体案が決まらないなど事業採算性が見通せないとして、「新交通が必要かどうかも含め再検討が必要ではないか」と語っている。

横浜・上瀬谷新交通の参画可否 シーサイドラインが検討開始(2021年10月 6日、カナロコ)

横浜・上瀬谷の新交通 シーサイドライン、市の情報不十分 (2021年10月26日、カナロコ)
同社によると、新交通の採算性などを審議したが、議論の根底となる横浜市からの情報が不十分なため、再回答を求めるという。
... 同社は今月6日の初会合後、市に対し ... 具体的な情報を求めたが、十分な回答を得られなかったという。

 先日の繰り返しですが、現時点で第三者に明らかにされている横浜市による跡地利用構想は普遍的な単語を並べるに留まっており、横浜シーサイドライン側が妥当性を判断する環境にない状況が透けて見えます。

都市整備局上瀬谷整備推進課ホームページ
旧上瀬谷通信施設における国際園芸博覧会の開催及び基盤整備に向けた検討について 、市会建築・都市整備・道路委員会に報告しました。(令和3年9月22日)

旧上瀬谷通信施設における国際園芸博覧会の開催及び 基盤整備に向けた取組状況について(建築・都市整備・道路委員会 令和 3年 9月22日 都市整備局)
【参考4】テーマパークのコンセプト
① 全体コンセプト
上瀬谷の自然と共生しつつ、最新テクノロジーを活用し、訪れる方々が夢や希望を享受できる未来のアミューズメントパークを実現し、横浜の新たな一大観光拠点を目指します。
② 基本コンセプト
... 

 また、(仮称)上瀬谷ラインは「上下分離」の形態で実現する、とのことですが、近年、全国各地で見られる「上下分離」と比較しても「上」すなわち運行事業者側に比較的大きな負担(すなわち事業リスク)を求める、昔ながらの事業スキームのように伺えます。

 この事案について、短期的には、横浜市が横浜シーサイドラインに対して求めている11月末までの「回答」内容に関心がいきますが、横浜市側の大きな譲歩がなければ、進捗をみることはなさそうにも伺えます。

 長期的には、事業者が安定的に事業を営める、との意味で「持続可能な公共交通政策」を打ち出せていない横浜市の状況が懸念されます。横浜市の公共交通政策に対する本気度、誠実さが問われる状況、とは言い過ぎでしょうか。(H.I.)

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2021年9月 8日 (水)

横浜市が(仮称)上瀬谷ラインの運行事業者として横浜シーサイドラインに参画を依頼

 本日、98日付の神奈川新聞に記事が掲載され、追ってシーサイドラインの運営事業者である株式会社横浜シーサイドラインから、相鉄線瀬谷駅と、旧上瀬谷通信施設エリアとを結ぶ新交通システムの運行事業者としての参画依頼があった旨の報道発表がありました。

横浜市、上瀬谷の新交通運行 シーサイドラインに要請
上瀬谷通信施設跡地(横浜市瀬谷・旭区、約242ヘクタール)と相鉄線瀬谷駅周辺を新交通システムで結ぶ構想を巡り、横浜市が横浜シーサイドライン(SL、同市金沢区)に対し、運行事業者となるよう要請したことが7日、分かった。
市は跡地での大型テーマパーク開発を前提に新交通を整備する方針だが、構想は検討中で、先行きは見通せない。開業しても採算が合わなければ「赤字路線」となる可能性があり、同社は慎重に検討、判断するとみられる。

横浜市から(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画の依頼がありました。
計画の中で示された新交通システムの運行事業者として令和397日に 横浜市から弊社に対し、参画の依頼がありました。

  同区間の目的地である上瀬谷通信施設跡地では、2027年の国際園芸博覧会開催、その後のテーマパーク開発を横浜市では計画し、そのアクセス手段と位置付けています。また横浜市から横浜シーサイドラインへの依頼内容に基づくと、横浜市はインフラ部(軌道)を整備し、横浜シーサイドラインに対してはインフラ外部(車両、電気・通信設備、駅施設、車両基地等)の整備並びに運行主体を求めていることから、いわゆ「上下分離」の形態で実現することを想定しているようです。

 横浜シーサイドラインでは、 今後、事業の事業の採算性など検証し、本年(2021年)11月末日までに横浜市宛に受諾の可否を回答するとしています。 (H.I.)

<参考>

 横浜市による旧上瀬谷通信施設地区へのアクセス手段検討の経緯については下記をご参照ください。

旧上瀬谷通信施設地区(新たな交通検討事業)

 

<2021年 9月12日追記>

 本件に関して、かねてより熱心に報道されている朝日新聞は以下の通り報道しています。全体構想が見定まらないなかで横浜シーサイドラインが(いくら横浜市が63%強を出資する第三セクターであるとは言え)躊躇するのも無理もない話です。当会は、横浜市の動きを今後も注視していきたいと思います。

米軍跡地のテーマパーク構想、是非を再検討 新・横浜市長の山中氏 (2021年 9月5日 朝日新聞デジタル)
新交通システムの建設を巡っては、「街づくりに必要な取り組みだが、一方で市の負担も400億円以上あり、... 最終的にテーマパークをどうするかとも関係してくる」と述べた。
市は ... テーマパーク構想の是非や新交通システムの事業採算性を見極め、判断していく姿勢を示した。

米軍跡地の新交通システム、横浜市が三セクに要請 採算性には疑問符 (2021年 9月 9日 朝日新聞デジタル)
横浜SLは外部の公認会計士や弁護士が加わった検討会議を設け、利用客の見込みや事業の採算性を見極める方針を示した。
... 国際園芸博覧会(花博)までに開業させるため、市は今年度中の早い時期に国土交通省に許可(特許)の申請を済ませる方針を示している。だが、特許申請を行う運行事業者はまだ決まっていない。複数の関係者によると、市は早くから横浜SLを最有力視し、水面下で打診してきたが、同社内に慎重意見が強かったという。利用客の見込みや事業の採算性を疑問視しているためとみられる。

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2021年8月20日 (金)

2021年横浜市長選挙における公開質問状

 皆様も御存知の通り、横浜市では今月8月22日を投開票日とした横浜市長選挙が行われております。

 横浜にLRTを走らせる会では、各候補者*1に8月8日付で公開質問状を送付し、そのうち当会にて設定した回答〆切の16日までに回答のあった5名の候補者の回答を以下に掲載いたします。

2021年横浜市長選挙 公開質問状 回答一覧

p.1 太田正孝候補
p.2 林文子候補
p.3 山中竹春候補
p.4 田中康夫候補
p.5 坪倉良和候補

*1 福田峰之候補は質問状送付時点にて連絡先不詳だったため、公開質問状を送付しておりません

 各候補とも、選挙戦の最中、お忙しいところ真摯に当会の質問状に回答いただき、まことにありがとうございました。いただいた回答は、当会の活動に役立てていきたいと思います。

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2021年7月22日 (木)

横浜市都心臨海部での超小型電気自動車のレンタカーサービス開始

 横浜市都心臨海部のトヨタレンタカー各店舗にて、トヨタの超小型電気自動車「C+pod」の貸し出しが今月(20217月)から開始されるとのことです。

横浜観光は超小型EVで トヨタ販売店など、レンタル開始
トヨタ自動車の超小型電気自動車(EV)「シーポッド」のレンタカーサービスを横浜市の都心臨海部で始める。
...
外装は市交通局と連携し、「観光スポット周遊バスあかいくつ」をイメージしたデザインとした。

Cpodヨコハマ

 「C+pod」はトヨタ自動車が2022年に発売を予定している二人乗り超小型電気自動車で、最高速度時速60キロメートル。一度の充電で走行可能な航続距離は150キロメートルだそうです。高速走行の機会もない街中の移動にはこの性能で十分ですし、何より非常に小回りの効く車体ですので、使い方によっては有効活用できそうです。

 ちなみに、横浜市では過去に日産自動車と協同で実施していた「ヨコハマモビリティプロジェクトゼロ (YMPZ)」にて、国内初の「二人乗り超小型電動車両」のカーシェアリング実証実験を2011年から2021年まで実施していました。

- 低炭素都市を目指した新たな次世代交通の推進に向けて -
国内初! 二人乗り超小型電動車両に関する実証実験の実施
Wayback Machine によるアーカイブ)
国土交通省から環境対応車を活用したまちづくりに関する実証実験地域に横浜市が選定され、YMPZの一環として国内初となる「二人乗り超小型電動車両」に関する実証実験を実施することになりました。

ヨコハマモビリティ“プロジェクトZERO”
横浜市と日産自動車は、2009年度から2013年度までの5年間で共同で低炭素社会の次世代交通を目指したヨコハマモビリティプロジェクトZERO” を策定しました。横浜市内で排出される温室効果ガスの約20%を占める自動車など運輸部門の排出量を大幅に削減することを目指し、エコ運転の普及や電気自動車の普及などの課題に取り組みます。

チョイモビ ヨコハマ
Wayback Machine によるアーカイブ)

チョイモビ実行委員会

超小型モビリティを活用したカーシェアリングの実証実験「チョイモビ ヨコハマ」を終了します
当初の目的を達成したため、令和3年3月16日をもって、「チョイモビ ヨコハマ」を終了します。

 公共交通には、JR線、民鉄線、地下鉄のような大規模輸送手段、バスやLRTのような地域に密着した中量輸送手段では補いきれない隙間需要が必ず存在します。

 小型車両によるカーシェアリングは、パーソナルモビリティ(個人用途の移動手段)でありながら環境負荷、道路負荷を小さく抑えることが期待されることから、ラストワンマイル(公共交通機関や、大規模駐車場から目的地までの多少の移動)の不便を解消するための選択肢の一つとして有効ではないかと考えられています。このような隙間を埋める手段が提供され、それを利用者が簡単に選択できてこそ、「誰でも」「気軽に」使える社会インフラが機能するのではないかと考えられます。(H.I.)

 

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2021年7月 5日 (月)

横浜市営バス「高さ3メートルのバス停標識」の改善

 神奈川新聞カナロコに市営バス関連の興味深い記事が掲載されていました。

3m超バス停、低くなってた 読者の問題提起が奏功、でも… (カナロコ 2021年 7月 5日)
... 「浅間町車庫前」など四つのバス停が高さ約3メートルもあり(写真【1】)、車いすユーザーや子ども、高齢者に使いづらいというものだった。
... 「浅間町車庫前」のほか、同区の「高島町」「花咲橋」「雪見橋」を合わせた4バス停は、すぐに約2メートルの標準タイプに取り替えたという(写真【2】)。
... 同局の担当者は「時刻表を縮小印刷し、バス停の高さを抑えても全部掲示できるように工夫した」と教えてくれた。...

 また、この記事の発端となった問題提起が今年1月に掲載されていました。

高さ3m級バス停のなぜ(上)時刻表、見にくくない? (カナロコ 2021年 1月 7日)
市内でよく見かける白いポールのバス停と形は変わらないが、記者の身長より倍ぐらいありそうだ。男性と一緒に手を伸ばして3メートルのメジャーで測ってみた。目盛りがいっぱいになるが、手が届かずうまく測れない…。
... 時刻表は見えるが、びっしりと書かれた行き先案内は遠すぎてよく見えない。...

高さ3m級バス停のなぜ(下)横浜市営、驚くべき形態の多さ(カナロコ 2021年 1月 7日)
「通常の白いポールのバス停(写真1)ですら1基数万円。正直、購入できる数に限りがあり、安全性に問題がない限りは交換できない」...

 細かい経緯は記事を参照いただくとして、ひとまず「背の低いポールに置き換える」「時刻表を縮小印刷する」ことで当座の問題を解決したようです。

 しかし、それでもなお「複雑」「わかりにくい」バス停は横浜に限らず、全国各地、そこかしこに残されています。

 そのわかりにくさの原因は様々で、ざっと思いつく限りでも、路線網やダイヤが複雑であること、複数乗り場を有するターミナルやバス停で適切な誘導がなされていないこと、事業者により時刻表や路線図の様式が様々であること、事業者により乗降方法(前降り、後降り)や運賃収受方法が様々であること、等々、枚挙に暇がありません。

 こうした利用者目線での使いやすさの改善を、各々の公共交通事業者が各々に実践する(実践せざるを得ない)状況では個別最適は避けられません。

 混沌とした状況を改善するには、事業者を管理監督する立場が主導するなどして、統一感あり、わかりやすく、親しみやすい交通システムが作りあげられる必要があるでしょう。地方によっては、そのような先進的な取組みで改革を図った事例もあるようですが、横浜での取組みはまだまだと言わざるを得ません。

 当会においても、国内外、さまざまな事例を研究するなどして、「横浜ならどうあるべきか」を提案していかなければならないのでしょう。

 

<2021年7月8日追記>
 カナロコに掲載された当該記事は、横浜にLRTを走らせる会も団体として加盟している、「横浜交通まちづくり協議会」のメンバーによる提案、参加により実現したと伺っております。

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2021年5月28日 (金)

米軍上瀬谷通信施設地区跡地利用に関する続報

 先日の記事で話題に挙げた、米軍上瀬谷通信施設地区の跡地利用に関連して、続報が朝日新聞に掲載されていました。

相鉄HDが検討断念 横浜西部、米軍跡のテーマパーク構想 協議継続も先行き不透明
米軍跡地の「ディズニー級」テーマパーク、相鉄が断念
横浜市西部の米軍施設跡地で、... 「超大型テーマパーク」開発を検討していた ... 相鉄ホールディングス ... が、検討を断念したことがわかった。大手不動産会社が事実上引き継ぐことが協議されている。...
(見出しの異なる2つの記事の本文は同一です)

 テーマパーク開業後の需要も見据えた中量輸送機関として、いわゆる「新交通システム」による「上瀬谷ライン(仮称)」が横浜市により計画されていますが、跡地利用計画がはっきりしないことには「上瀬谷ライン」の需要予測をはっきりさせることもままならず、ひいては実現に必要な軌道敷設特許取得は困難な状況です。横浜市は「上瀬谷ライン」の花博にあわせた整備を目論んでいましたが、その先行きが注目されます。

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2021年5月23日 (日)

川崎市でのBRT導入計画

 川崎市では、JR川崎駅前と、臨海部の工業地域とを結ぶ、BRT(バス高速輸送システム)の導入に向けて取り組んでいるようです。

川崎臨海部において本市初となる連節バスの試走を実施します (2021年 3月 2日、川崎市)
臨海部の交通機能強化に向けた取組の一環として、川崎駅から臨海部へのBRT導入に向けて...連節バスの試走を実施します。

連節バス導入へ試験走行 川崎駅東口-水江町間
(2021年3月13日、神奈川新聞)川崎市臨海部のバス高速輸送システム(BRT)構築に向け、... 連節バスをJR川崎駅東口─水江町間で試験走行させた。... 2022年度の本格導入を目指す。

臨海部の交通機能強化に向けた実施方針(案)に関する意見募集について (2021年 3月15日、川崎市)
臨海部の通勤環境の改善を図り、持続的な発展を支え価値を向上させる交通機能の強化を進めるため、臨海部がめざす交通ネットワークの将来像や今後の取組等を示す「臨海部の交通機能強化に向けた実施方針(案)」を取りまとめましたので、...

【臨海部のさらなる発展へ第一歩】2022年度営業運転開始に向け 川崎市で初の連節バス試走 (2021年 3月15日、建設通信新聞)
川崎駅東口~水江町間のBRT ... 運行開始後は、川崎駅東口~東扇島区間のBRT導入も目指す。... 24年度からの運行を計画している。
... 運行事業者は、21年度に決定する予定だ。
市は ... BRT導入や京急大師線大師橋駅の駅前交通広場整備(設計中) ... 交通機能強化の取り組みを進めている。

 国内有数の路線バスのターミナルであるJR川崎駅と、臨海部工業地域との間では、通勤輸送を中心として、多数の路線バスが設定されており、川崎駅近辺ではバスターミナルへの出入りの車列による渋滞が御馴染みのものになっています。川崎市の市議のなかには横浜市交通局が先に開業させた「ベイサイドブルー」に試乗したと報告する方もおみえで、両市切磋琢磨し、よりよい交通システムに育つことを期待しています。

 

 

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2021年5月21日 (金)

朝日新聞「(声 どう思いますか)されど公共交通」

 朝日新聞のオピニオン欄に下記の記事が掲載されました。2回にわたり、さまざまな視点での意見がなされており非常に参考になります。

(声 どう思いますか)されど公共交通:上 (2021年5月5日)
談話は、5期19年の任期を終えて先月退任した森雅志・前富山市長(68)。(中略)全国の公共交通が陥っている「負のスパイラル」からいかに脱却したのか。再生への処方箋(せん)を森氏に聞きました。

(声 どう思いますか)されど公共交通:下 (2021年5月19日)
3大都市圏を除くと、バス事業者の8割以上が赤字とされ、コロナ禍が苦境に追い打ちをかけています。海外の公共交通政策に詳しい関西大の宇都宮浄人(きよひと)教授(交通経済学)に話を聞きました。

 区々の提言にコメントをすることは避けますが、いずれの考えにも唸らされます。今のところ、無料会員であれば全文が閲覧できる記事として公開されているので、皆さんもお手すきの際にご参照いただければと思います。
 ただ、「あれも欲しい、これも欲しい」と言うのは簡単ですが、何が社会に受け入れられるか、皆が納得した上で負担できるか、との正解のない答えを導き出すことは非常に難しいことです。当会では(また、皆さんも当会をご活用いただき)オンライン、オフラインの様々なかたちで議論する場、考える場を持つことができればと考えています。

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