続・横浜シーサイドラインでの(仮称)上瀬谷ラインの検討状況
先日の記事では、横浜シーサイドライン社が、横浜市の依頼を受け、相鉄線瀬谷駅と、旧上瀬谷通信施設エリアとを結ぶ新交通システムに対する運行事業者としての事業参画可否を外部有識者含めて検討、判断することに着手した旨の報道があったことを記しました。その後、横浜シーサイドライン社として、事業に参画すべきでない旨の結論を判断し、正式に横浜市に対し回答しました。
米軍跡地の新交通、事業参画にノー 横浜市の3セク会議 (朝日新聞デジタル 2021年11月17日)
「横浜シーサイドライン」は16日、... 市から要請された上瀬谷ラインへの事業参画について「現時点では参画すべきでない」とする上申書をまとめた。
... 三上章彦社長は会議後、「市の事業提案は実現性のプロセスが不明確で内容は疑問視せざるをえず、『参画すべきでない』との結論は妥当と考える」とするコメントを出した。
上瀬谷ライン「参画すべきでない」 横浜市の三セク鉄道 (日本経済新聞、2021年11月17日)
横浜シーサイドラインの判断を受け、同市の担当者は「運行事業者からみて課題があったと認識している。今後、正式な回答を待って対応を検討したい」と話した。
上瀬谷ライン不参画の経営方針決定 横浜市の三セク鉄道 (日本経済新聞、2021年11月18日)
横浜シーサイドライン(横浜市)は18日に常務会を開き、現時点で事業に参画しないという経営方針を全会一致で決定した。11月末にも市に通知する。
... 同社の三上章彦社長は「早急に事業計画の見直しをすべきだ」とのコメントを出した。
横浜・米軍跡地の新交通、三セクが参画断る決定 計画見直し可能性も (朝日新聞デジタル2021年11月19日)
経営トップによる常務会を開催。... 「参画すべきでない」とする上申書を「妥当」と結論づけた。同社は回答書をまとめ、市が期限とする11月末までに提出する。
... 市都市整備局の担当者は取材に「回答を精査した上で今後の進め方を検討していく」と話す。...
需要読めず負担重く 横浜市の「上瀬谷ライン」暗雲(日本経済新聞、2021年11月29日)
事業参画を再検討する可能性 ... 条件として同社は、テーマパークの具体的な計画や新交通システムの延伸計画、テーマパークが撤退した場合や感染症流行時などのリスク回避策の提示、テーマパークを建設するコンソーシアム(共同企業体)からの出資、適切な工事期間や整備事業費などを挙げている。
【インタビュー】上瀬谷の新交通 横浜シーサイドライン社長に聞く(Yahoo! Japan ニュース/TVK、2021年12月 3日)
第3セクターは ... ややもすると横浜市の依頼について素直に受け止めて、事業化しながら困ったことがあったら横浜市が税金で助けてくれるというイメージがあります。
... 地域に必要な第3セクターも自分たちで責任を取っていく。ある意味では、第3セクターの経営の健全化が社会から厳しい目で見られていると思う。
ここまでの経緯をまとめると以下の通りです。
- 横浜市は、上瀬谷通信施設跡地で2027年に開催予定の国際園芸博覧会(花博)およびその後の跡地開発(テーマパーク開設)とし、将来的には年間1500万人が訪問するエリアとすることを企画した。
- 同地へのアクセス手段は、当初より「瀬谷駅を起点とした新たな交通(中量軌道など(LRT、新交通システム、モノレールなど))」として広義の「鉄道」による実現が企図されていたが(2020年3月12日 横浜市会 建築・都市整備・道路委員会 [pdf] ほか)、後に「(仮称)上瀬谷ライン」として、新交通システム (AGT) が選定された(2020年6月30日 横浜市会 建築・都市整備・道路委員会 [pdf] )。
- 横浜市は、「(仮称)都市高速鉄道上瀬谷ライン整備事業」として2020年1月には環境影響評価手続に着手し、2020年7月には「環境影響評価方法書」を公表した。
- 横浜市は、「(仮称)上瀬谷ライン」の整備費を約640億~680億円と算定し、いわゆる「上下分離」方式を採用し、整備費のうち約2分の1を公費(4分の1を横浜市、4分の1を国)の負担、残りを運行事業者の負担で実現するとした。
- 横浜市は、市内で新交通システム「シーサイドライン」を運行する横浜市の第三セクター横浜シーサイドライン社に対して、運行事業者としての事業参画、および同社が主体となって年内に国(国土交通省)に対して軌道法に基づく事業に必要な申請(特許申請)を行うこと、を求めた。
- 横浜シーサイドライン社では、事業参画の依頼を受けて、事業の採算性や継続性について、外部有識者を含む検討会議を実施し、回答する方針を示した。
横浜市から(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画の依頼がありました。(2021年9月8日)
- 同社では、本年(2021年)11月18日には横浜市による現時点での事業参画依頼を断念する方針決定を行い、横浜市が期限と定める11月末日迄に横浜市に対し正式回答する方針を明らかにし、11月26日には正式回答を行った。
令和3年度第1回経営方針裁定会議の開催(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼に関する審議(2021年10月6日実施)
令和3年度第2回経営方針裁定会議の開催 (仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼に関する検証・審議(2021年10月26日実施)
令和3年度第3回経営方針裁定会議の開催(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼に関する検証・審議(2021年11月16日実施)
(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画依頼について(横浜市へ回答)(2021年11月26日)
- 同社では、12月2日付けで「(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画の再検討に係る方針について」と題して社長談話を公表した。
(仮称)上瀬谷ラインへの事業参画の再検討に係る方針について(社長談話)
本事業の採算性や継続性について抜本的な見直し提案がされた場合は、当社は本事業への参画を再検討する所存です。
かねてより無理筋が過ぎる計画と考えられていましたが、この半月ほどで事態が大きく動きました。「弊社の筆頭株主である横浜市や横浜市民に予期せぬ負担をかけることなく」「弊社のできる範囲でサポートしていきたい」「もう少し幅広い方が利用いただけるような街づくりプラン ... 延伸ありきではなく、街づくりの深堀りした議論が前提に必要」「テーマパーク構想以外に ... 地域課題を解決するために市が何をすべきなのかという議論が外から見ていて、横浜市には不十分かなと思っています。 」等々、一般に第三セクターの幹部層からはなかなか聞かれない類のコメントを横浜シーサイドライン社の社長は発信しています。第三セクターとしては当たり前でなくても、一般的な事業者としてはごく当たり前の姿勢です。街づくり、公共交通の整備、行政システム、という枠を超えて考えさせられます。 (H.I.)
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